国交省、検査済み証なし物件のガイドライン改訂へ

2016年1月28日付「住宅新報」の報道によれば、国土交通省は2014年7月に通知した「検査済み証のない建物の建築基準法適合調査ガイドライン」を今年6月頃までに改訂する方針です。
検査済み証のない中古住宅の流通促進が目的といわれていますが、その裏には意外な理由がありました。

1999年以前の検査済み証取得率は半数以下

「検査済み証」とは、建築物の工事完了後にその建築物が建築基準法に適合しているかどうかの検査を受け、合格した場合に特定行政庁や指定確認検査機関が発行する建築基準法適合証明証書です。
現在は検査済み証取得が義務付けられていますが、1999年以前は義務ではなく任意だったため、検査済み証取得率は半数以下にとどまっていました。

検査済み証のない既存建築物を増改築や用途変更する場合は、建築基準法に適合しているか否かを確認する必要があります。
しかしその調査に多大な時間と費用を要するため増改築・用途変更を見送るケースが多く、これが検査済み証のない中古住宅の流通疎外要因の1つといわれています。

  このため国土交通省は、検査済み証のない建築物の建築基準法適合調査を円滑にできるよう、その調査手順を示した「検査済み証のない建物の建築基準法適合調査ガイドライン」(以下ガイドライン)を策定、2014年7月に関係機関・業界団体へ通知しました。

現行ガイドラインでは、「検査済み証のない建築物」について、まず建築当時の確認済み証の有無調査を行うことになっています。確認済み証がある場合は調査にさしたる手間はかかりませんが、「検査済み証のない建築物」の大半を占める確認済み証がない場合は、建築物所有者から調査依頼を受けた建築士が復元図面(規模等に応じて復元構造計算書)を作成、「調査に必要な図書」を準備し、その上で「調査者への提出図書のとりまとめ」となっており、相当な手間と費用がかかります。
この点は「ガイドライン通知以前と変わらない」(建築業界関係者)ようです。

その後の調査フローは確認済み証がある場合もない場合も共通で、ガイドラインに示された手順に沿って「図上調査」と「現地調査」を実施し、「報告書」を作成します。
「報告書」は、増改築工事などをする際の「既存不適格調書」に添付する資料の一部として「活用することも可能」です。

使い勝手が悪く利用率が低い現行ガイドライン

現行ガイドラインは、国土交通省の社会資本整備審議会の答申(2013年2月)と「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」の報告書(2013年6月)を踏まえて策定されました。

社会資本整備審議会の答申では「検査済み証のない建築物が既存不適格建築物なのか違反建築物なのかの判断が困難で、その調査に多大な時間と費用を要する場合があるため、耐震化に支障を来している」と指摘され、「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」の報告書では「金融機関の融資審査で検査済み証を求められる場合が多く、検査済み証のない中古住宅が新築や増改築当時の建築基準関係規定に適合していたかどうかを民間機関等が証明する仕組みが必要」との問題提起がされていました。

  そこで現行ガイドラインでポイントになるのが「既存不適格建築物と違反建築物の違い」といわれています。
既存不適格建築物とは、新築・増改築・用途変更において当時は適法だったものの、その後の法改正などにより現行法には適合していない建築物のことです。違反建築物とは当初から法律に適合していない建築物のことです。

このため、既存不適格建築物を増改築・用途変更する場合は現行法への適合が求められるものの、ガイドラインによる調査で既存不適格建築物であることが明らかになった場合は、一定の緩和措置が認められるなど、臨機応変な対応が可能なようです。

一方、違反建築物に対しては、建築中なら工事停止命令、建築完了後なら使用禁止命令、電気・ガス・水道供給停止命令など、特定行政庁による厳しい措置が定められています。

  ところが現行ガイドラインに対して、2015年6月に内閣府で策定された「規制改革実施計画」の中に「更なる運用改善に向けた要請」が盛り込まれました。

これを受けた国土交通省はどんな改善が必要か探るため、検査済み証のない建築物の建築基準法適合状況調査を行っている全特定行政庁に対してアンケート調査を実施(回答率94.4%)したところ、ガイドラインに基づく建築基準法適合状況調査を実施している特定行政庁は、わずか34.5%しかないことが明らかになりました。

つまり、「ガイドラインに具体的な調査方法が示されていない」など使い勝手が悪いため、検査済み証のない中古住宅の流通促進にはあまり役立っていなかったことになります。

  この事実に驚いた国土交通省は、アンケート調査結果を踏まえて改善点を洗い出し、調査方法・範囲の例示、指定確認検査機関の役割の明確化などを盛り込んだガイドラインの改訂を急遽決めた模様です。
改訂によりガイドラインの使い勝手がどこまでよくなるのかが注目されています。