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不動産用語集
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期投資vs短期投資ではなく、目的を実現するための長短ポートフォリオ投資を推奨する理由

投資期間は物件タイプとローンの組み方で分かれる

――不動産投資で、長期と短期の区切りは何年なのでしょうか?
私は10年を区切りとして考えています。一般には5年が区切りといわれる場合が多いと思いますが、6、7年で売却という例も多く、それは短期投資ととらえています。


――短期投資にはどういう特徴があるのでしょうか?
投資期間の考え方は、物件タイプとローンの組み方で「短期的な投資になりやすい物件」「長期的な投資になりやすい物件」と、おおよそ分かれます。もちろん長期型の物件でも短期で売り抜けることはあります。
短期型の物件をわかりやすく言うと、買う値段と売る値段があまり変わらないような物件です。「土地値物件」という言い方をしますが、「土地評価の高い物件」や「新築のRC造物件」などが該当します。
特徴は、次の買い手もローンが組みやすいということです。購入価格とそれほど変わらない値段で売ることができ、短期投資に合っています。


――もう一方の長期投資に向くのはどのような物件でしょうか?
長期型の物件で典型的なのは「木造の新築アパート」です。新築でも鉄骨造の物件は、長短の中間的な位置付けになりますね。
木造の新築アパートの場合は、確実に買う値段より売る値段のほうが安くなりますので、その代わりにインカムゲイン、つまり投資期間中のキャッシュフローで、投入した自己資金を回収できないと採算が合いません。目減りするキャピタルロスよりもインカムゲインが上回るまで所有しようとすると、必然的に長期になるわけです。


――その区切りが10年ということですか?
そうですね、10年ぐらいで回収できて利益が出れば、新築物件では優秀ですね。実際には12、13年ほどで回収する物件が多いと思います。

短期投資のみ、長期投資のみでは目的を実現できない

――よく言われている「個人は長期投資、法人は短期投資」という鉄則は正しいですか?
それは、売却する際の税の観点だけ見た鉄則です。個人の場合、所有5年以下で譲渡すると、所得税と住民税を合わせて約39%の税金がかかります。それが長期であれば20%になりますので、長期が向いているといわれます。一方で法人の場合は、法人税だけで済むので短期でも成立する、ということだと思います。
ただ、税金は利益に対して課されるものです。購入金額と売却金額の差だけではなく、売買手数料や減価償却もあります。期間中の家賃収入で大きく利益が出ても、売買の部分で利益がなければ、税率の違いは関係なくなります。


――そうすると、何が正解なのでしょうか?
私は、個人でも法人でも、長期と短期、両方を組み合わせて投資ポートフォリオを組むべきだと考えています。そもそも、個人と法人の区分でも、個人で投資用の法人を設立することは容易ですし、実際、法人にしている方は数多くいらっしゃいます。そうすれば、先ほどの税率は適用されません。


――では、相談に来られた方に、どういう物件をすすめているのですか?
どの方に対しても、「なぜ不動産投資をするのか」という目的を聞くのが、統一された我々の最初のアクションです。
不動産投資は目的ではなく手段です。「ある目的を達成するため」に「不動産投資を活用する」という順番ですから、最初に目的を伺います。その目的に従って、短期型の物件、長期型の物件と、さまざまな引き出しを開けながら、ポートフォリオを組んでいくというプロセスです。


――ただ物件を紹介するだけではないのですね?
当社は物件の仲介会社ではなく、不動産総合コンサルタントです。お客様の目的や資産、価値観、リスク許容度などをじっくり伺い、それぞれの方の価値観に合致しながら、目的に達成できるポートフォリオを組んでいきます。


――期間は考慮すべき要素のひとつということでしょうか?
そうですね。ただ、資産を拡大したいという目的の方には、「5年後、10年後のキャッシュフロー」という「目的を数値化する」際に重要な要素となります。


――どのような目的が多いのですか?
資産形成は、それぞれの方の事情や価値観が関わってきますので、さまざまです。例えば、「子供が将来大学へ行くために教育費を準備したい」「将来的な自分の資産目的」「相続対策で逆に資産を圧縮したい」という方など、目的がまったく異なりますので、最適なものを提案していきます。


――傾向はあるのでしょうか?
おおまかな傾向はあります。


長期型物件は最初に大きくキャッシュフローを得られます。経営的に言えばP/L(損益計算書)を良くする投資で、負債は増えますが、コンスタントに長期にわたってキャッシュフローを得たい方に向いています。例えば、給与収入のほかに、もうひとつ収入の柱を得たいといった目的の方ですね。
逆に短期型物件は、今はキャッシュフローを必要としないが、将来的に資産を築きたいという、キャピタルゲインを求める方に向く、B/S(バランスシート・貸借対照表)を良くする投資です。土地値物件を購入して短期で売るとき、売る値段とローンの残債が担保力の資産として残りますので、それを繰り返して資産を拡大させていく投資方法です。短期的な投資を繰り返すほうが、最終的な資産額は大きくなります。


――その両方を組み合わせていくのが最適なのですか?
そうです。目的によって比重を変えながらポートフォリオを組みます。組み合わせることによって、リスクを軽減できますし、ローンを組みやすくなるという利点もあります。
不動産投資で利用できるローンは大きく分けて2種類あるのですが、アパートローンといった「用途限定融資」ですと、年収の10倍までというように上限が決まっています。一方、プロパーローンといった「事業性融資」の場合、金融機関の審査を通るポートフォリオであれば、上限はありません。
ですが、プロパー融資を組むためには、財務諸表がチェックされますので、P/L的な収支と、B/S的な資産と負債のバランスを取る必要があります。その意味でも、長期型物件と短期型物件を組み合わせることが必須だといえます。

投資期間で考える3人の投資ポートフォリオ実例

<実例1>短期型物件のみで将来の資産形成に着手した29歳 ●相談経緯
29歳のAさん。高収入で独身でもあり、毎月25万円ほど貯金している。投資目的は将来的な資産形成。

●提案内容
典型的な短期型物件が向くと考えてプランニング。4,000万~5,000万円ほどの土地値物件を購入し、6~7年後、価格がさほど変わらない時期に売却すると、その間のローンの残債が大きく減ることで、3,000万円ほどの利益を想定。そのような物件を買い増していくポートフォリオをご提案。

●投資内容
1棟目に5,000万円の土地値物件を購入。2棟目は7,000万円の同様の物件を購入し、現在は1億円以内で同様の物件を物色中。

●細田コメント
貯金ができるほど余裕のある方に最適なポートフォリオです。短期的にキャッシュフローは出ないものの、土地値物件は家賃収入でローンを返済しているあいだも価格が下がらないため、資産が大きくプラスになります。将来的にキャッシュが必要になったときには、今仕込んでいる資産を一気に解放して再投資に回せば、キャッシュはかなりのものになりそうです。


<実例2>長期型物件のみで先が続かなくなった投資 ●相談経緯
相談時点で3棟を所有していた税理士の方。キャッシュフローを求めて、いずれも35年の長期ローンで新築物件を購入。キャッシュフローは得られるものの、B/Sが債務超過で4棟目購入のためのローンが組めず、資金的に行き詰まりを感じてご相談に。

●提案内容
物件を売却し、負債を整理して、短期型物件を組み合わせることをご提案。しかし、お客様がアクションを起こさず、保留中。

●細田コメント
税理士といえば、ローンの属性は良いとされていますが、債務超過額が大きく、このままでは新しいローンは組めませんでした。このポートフォリオですと、家賃収入が下がった場合、一気に返済困難になる可能性があります。非常にリスクの高い投資手法です。


<実例3>資産と家賃収入を両取りしたバランス型投資 ●相談経緯
50代の医師。加齢による身体的な変化から、仕事面での将来の不安を感じられ、不動産をもうひとつの収入源にしたいとご相談に。

●提案内容
今後、長期的に不動産投資や賃貸物件経営を事業として継続していくために、プロパーローンが欠かせず、P/LとB/Sが整ったバランスの良い投資を志向。具体的には、新築の長期型物件を購入してキャッシュフローを得たあと、短期の土地値物件を加えて資産を増やし、バランスを取るポートフォリオをご提案。

●投資内容
1棟目に30年ローンで1億4,000万円の新築物件を購入。2棟目には16年ローンで9,000万円の土地値物件(土地の値段だけで買える物件)を購入。3棟目には25年ローンで7,000万円の土地値物件を購入。物件のタイプだけでなく、ローン期間も分散することでリスクヘッジしている。

●細田コメント
2棟目、3棟目のローン期間は16年と25年ですが、5年など短期で売却しても利益が出る物件です。今後は中間分析時に資産状況の変化をお伝えし、短期で売却するか、所有を続けるか、今後の方針を決めていただく形です。

5年後の不動産の価格トレンドは読める

――ポートフォリオを組む際、何年後に売るといった具体的な戦略を立てるものですか?
最初に想定イメージは整えます。そして、当社は折々に中間分析をしてお客様とご相談しますが、「今後の不動産状況を考えると、次に購入する物件はもう少し中間的なものにしたほうがいいのでは?」や「想定より早く1棟目を売却して2棟目を購入したほうが、投資効率は良くなるのでは?」といった、軌道修正のご提案はしていきますね。


――先々の状況予測はできるものですか?
数十年先まで正確にとは言えませんが、5年後ぐらいでしたら不動産トレンドは読めます。その上で、金利上昇リスクや空室リスクなども見込んで、リスクのぶれも含めて安全な目線で予測しておけば、大きな損失は出にくいと考えています。


――2020年のオリンピック前後の価格変動についてはいかがでしょうか?
東京の地価は、オリンピックの直前から下がり始めるという予測が多いですが、物件価格はすでに下がり始めている予兆もあります。慎重に見続けていく必要はありますが、個人的にはピークは過ぎたのではないかと考えています。


――下手な予測で動くと恐いですね。
ただ、オリンピック後と言わず、例えば30年後、渋谷の不動産価格は暴落しているでしょうか?その可能性はかなり低いと思います。日本全体に少子化、高齢化、都心回帰といった大きな流れがありますが、当社は物件のエリアを大きな下落の考えにくい、東京、横浜、川崎、埼玉県南部に絞っています。そのこともあり、長期的に不動産トレンドを予測して、リスクをある程度コントロールできると考えています。


――なるほど。物件エリアを絞っているのはリスクコントロールの意味もあるのですね。納得しました。本日は貴重なお話をありがとうございました。


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