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スクの高まりがささやかれる世界経済と高い投資意欲に下支えされる日本の不動産投資市況

経済環境の不透明化などで冷えた投資意欲

都市未来総合研究所の「不動産売買実態調査」によると、上場企業やJ-REIT(国内不動産投資信託)が2015年度に行った国内不動産の取引件数は前年度比19%減の1014件、取引額は同23%減の4兆897億円で、取引件数・取引額とも大幅減となりました。
半期別取引額では上期の4%減に対し下期は36%減となり、下期の失速が顕著になっています。


2013年度以降、金融緩和を追い風に取引が活発化し、さらに円安進行により外資系法人の取引も増加したことなどから2014年度の取引額は5兆円を突破、2007年度と同水準まで取引額が回復しました。
ところが2015年度は、物件取得価格の上昇によるキャップレート(還元利回り)の低下、経済環境の不透明化などにより投資意欲が冷え、取引額の減少につながっているようです。


取引額をセクター別に見ると、取引額が最も大きかったJ-REITは前年度比7%減、外資系法人は同55%減、建設・不動産は同51%減で、不動産投資専門セクターとも言えるJ-REITの減少幅は比較的小幅にとどまっています。 対して建設・不動産の場合は、キャップレートの低下による運用目的の物件取得減少、地価高騰・建築費高止まりによる開発用地の取得減少などが取引額大幅減少要因と見られています。


世界市場も中国の株安など国際的リスク増大で投資が消極化

不動産取引の低迷は我が国固有の現象ではなく、世界的な現象のようです。
例えばJLLが2016年2月1日に発表した「世界の不動産投資分析レポート」によると、概要は次のようになっています。


●2015年の世界の商業用不動産投資額は前年比1%減の7040億ドル、2015年第4四半期の投資額は前年同期比8%減の2090億ドルだった。
●地域別投資額はアメリカ大陸が前年比4%増の3140億ドル、第4四半期は前期比12%増の850億ドル。通年の投資額はリーマンショック前のピーク(2007年)の3040億ドルを超え、同地域における最高額になった。欧州・中東・アフリカは前年比4%減の2670億ドル、アジア太平洋地域は前年比6%減の1240億ドルとアメリカは好調。
●主要都市別投資額は2014年の1位と2位が逆転し、ニューヨーク(483億ドル)が1位、2位がロンドン(394億ドル)となった。2014年までの過去5年はロンドンが1位を獲得していたが、2015年はアメリカ都市への海外投資家の取引が活発化しニューヨークに1位の座を譲った。昨年3位だった東京(158億ドル)は5位にとどまった。
●世界の投資額は2009年以降前年比増を保ってきたが、2015年は減少に転じた。これはドル高の影響、直近3ヵ月に起きた国際的リスク(中国の株安、原油安、EUの移民問題など)が投資活動の消極化要因になったと思われる。
しかし、世界的に2015年第4四半期の投資活動は活発な傾向が見られるため、2016年の世界の商業用不動産投資額は前年比2~4%増の7200~7300億ドルが予測される。


同レポートは、「2015年後半から2016年にかけ、世界的な経済不安定要素が増したことで投資家の心理状況が弱気になっているものの、オフィス賃料は世界的に上昇傾向にあり、不動産市場に対する投資家の関心の高さは継続している。したがって2016年の世界の投資額は2014年と同等レベルになると予測される」とコメントしています。


高まる不動産投資サービス会社の役割

同社は同レポート発表翌日の2016年2月2日に、今度は日本国内の不動産投資市場を分析した「ジャパン・キャピタル・フロー2015年第4四半期」を発表しています。概要は次の通りです。


●日本の2015年の投資額は4兆1100億円で前年比12%減だった。2015年第4四半期の投資額は7050億円で前年同期比59%減だった。
●2015年の海外投資家による投資額は約8960億円で前年比0.3%の微増だった。全体投資額に占める海外投資家の割合は、2014年の19%に対し2015年は22%へ上昇した。海外投資家からのインバウンド投資も依然堅調に推移しており、投資意欲も高い状態が続いている。
●都心5区(千代田・中央・港・渋谷・新宿区)内への投資額割合は、昨年比4ポイント減少の41%となった。5区を除く東京都内への投資額割合も前年比16%減だった。一方で東京都を除く首都圏への投資額割合は20%となり、昨年比で大幅に拡大している。
●2015年の日本の商業用不動産投資額は前年比減になったものの、投資額は回復に向かっており2016年の投資額は前年比10%増の4兆5000億円程度と予測される。


同レポートは「2015年の投資額は前年比減となったが、国内外投資家の投資意欲は依然として高く、投資市場を下支えしてきた低金利環境も当面は続くものと見られる。キャップレートはすでに歴史的な低水準にあり、これ以上の大きなキャップレート収縮を見込むのは難しいと考えられる。今後は賃料上昇による収益改善がメインドライバー(主要因)となり、物件価格上昇が予測され、2016年の投資額は増加傾向で推移すると見られる」とコメントしています。


国内経済はマイナス成長気味ながら比較的安定しています。しかし海外経済は不安定化の傾向を強めており、その影響で国内の不動産投資市場にも混迷化の可能性が高まっています。
こうした時期に、従来の個人的経験と知識による投資判断はリスクが高いと言えるでしょう。個人投資家保護の観点からも、2016年は専門的な知見と経験に裏付けられた不動産投資サービス会社の役割がさらに増しそうです。


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