「長期修繕計画」とは、長期的視点で建物の修繕工事の時期や内容、費用などを見積もったものです。
一般的な投資用マンションでは10~15年間隔で大規模なメンテナンスを行うことになりますが、一戸あたり50~100万円程の費用がかかるといわれています。そのため、マンションの住人は毎月「修繕積立金
」を積み立てていますが、大きな工事になると追加で費用が発生することも少なくありません。そういった事態を防ぎ、メンテナンスを無駄なく合理的に行うためには、早い段階から長期修繕計画を作成しておく必要があります。
2013年度、国土交通省はマンション管理組合などを対象に「マンション総合調査」を実施しました。それによると、長期修繕計画を作成している管理組合の割合は全体の89%に上っています。長期修繕計画の重要性が社会的に浸透していることを示す数字ですが、未だに長期修繕計画を作成していないマンションが一定数存在することもわかりました。
なお、長期修繕計画を「修繕積立金の算出根拠としている」と回答した管理組合は79.5%と、全体の8割弱を占めました。そのうち「25年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金の額を設定している」と回答したマンションは46%です(長期修繕計画の期間の平均は26年)。調査を実施した国土交通省が作成した「住生活基本計画」によると、25年以上の長期修繕計画に基づいて修繕積立金を設定するマンションの割合を、2025年までに70%に引き上げることを目標としています。
マンション経営やアパート運用の長期修繕計画を作成するときに最も重要な項目として、以下の4点が挙げられます。
(1)部分・箇所
修繕工事としては、屋上や外装などの「建築工事」、配水管や電気設備などを対象にした「設備工事」、そして駐車場や植栽などエクステリアの整備を行う「外構工事」などが挙げられます。メンテナンス費用を正確に算出するためにも、優先順位を明確にして、修繕する部分や箇所をしっかりと定めておきましょう。
(2)仕様
メンテナンスの実施方法や、使用する素材・機材などを明確にしておくことも大切です。曖昧にしたまま工事会社に見積もりを依頼すると、各社が独自の仕様で計算してしまうため、正確な比較ができなくなってしまいます。
(3)時期
一般的に20~30年をひとつのサイクルとして、「いつ」「何」を修理・交換するのかを定めておきます。使用している素材や塗料などによって「耐用年数
」が異なるのはもちろんですが、「海に近い」「バイパス沿い」など、マンションの周辺環境によっても劣化する期間は変動します。計画の立案や見直しをする際は、建物や設備が置かれた環境にも注意しましょう。
(4)金額
定めた修繕計画期間内に必要となる工事費用の総額を算出し、一戸あたりの修繕積立金の負担額を決定します。相場は変動することがありますから、3~5年間隔で修正すると良いでしょう。
長期修繕計画を作成していない(あるいはずさんな計画を途中で修正した)建物の場合、メンテナンスを行う時期に必要な修繕金を用意できないケースも考えられます。そのときは、一時金を徴収することになりますが、住人とのトラブルに発展するおそれがあるのが難点です。そういった事態を防ぐ意味でも、長期修繕計画を立てておく必要があります。
2008年6月、国土交通省は「長期修繕計画標準様式・作成ガイドライン」を策定し、以下の方針が定められました。
■仮設
■建物
■設備
■外構、その他
このガイドラインで掲げられた項目を参考に、所有するマンションやアパートの長期修繕計画を立てる(あるいは見直しを図る)ことで、より良い運営ができるようになるでしょう。