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GLOSSARY
不動産用語集
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定率法

pixta_16564127_M定率法とは、減価償却 の方法の1つです。建物や付属設備など、時間の経過によって価値が減少する物(減価償却資産)は、取得時にその必要経費をすべて計上するのではなく、資産の使用可能期間で分割することになっていますが、定率法では取得した年の負担が最も大きく、年とともに減少していきます。計算式は「未償却残高×定率法の償却率」となり、将来的な税金リスクが減るだけでなく、早期に償却を行えるので税務上のメリットも得られます。
なお、必要経費の分割方法には、定率法のほかに「定額法 」があります。定額法による減価償却は、資産の使用可能期間中、毎年同じ必要経費を計上します。計算式は「取得価額×定額法の償却率」で、使用可能期間中は一定の負担となりますので、比較的計算が容易です。

定率法のメリットと弱点

定率法も定額法も、中長期的な視点で見れば、減価償却期間で費用計上される金額は変わりません。しかし、短期で区切ってみると両者に違いが生じます。
日本国内では、減価償却の方式として、定率法を採用している企業が多く見られます。定率法では、減価償却期間の「初期にまとまった額の償却を行う」ため、初期の税負担額を抑えることができます。つまり、より多くのキャッシュを手元に残すことができ、再投資も実施しやすくなるのです。定率法を採用することでキャッシュフロー は有利となりますので、メリットは大きいといえるでしょう。
その一方で、定率法は減価償却を加速度的に行うため、減価償却期間の初期と終期で償却幅が大きく異なります。そのため、計算が複雑になりやすいという弱点があります。

定率法は、徐々に「前時代化」している

固定資産の価値が、歳月の経過によって徐々に減少していくのは確かですが、その減少幅を資産ごとに定量的に捕捉することは不可能です。
減価償却は、いわば固定資産の価値減少を法的に仮定して算出するものです。例えば乗用車の場合、走行距離がたった10kmでも、新車に比べて価値が半減する場合があるため、定率法のほうが減価償却の実態を表現しているといわれることがあります。しかし、「定額法が間違いで定率法こそが正しい」と客観的に評価できる性質のものではありません。
国際的には、減価償却方法が「定額法に一本化」されようとしています。ドイツでは、減価償却制度を縮小する方針とともに、2008年に定率法が廃止されました。イギリスでも、法人税率が引き下げられた際に、定額法での算定が広がっています。国際財務報告基準(IFRS)でも、定額法を採用することが多くなっています。

日本企業会計は定額法への移行過渡期

日本国内では、再三にわたる税制調査会での議論の末に、「平成27年度税制改正」では見送られました。それでも、将来的なIFRSの影響力を見据え、上場企業を中心に減価償却方法を定額法に変更するケースが増加しています。定額法への変更理由としては、「親子会社間での会計方針の統一(連結上の便宜)のため」や「事業環境変化や設備投資などを踏まえて、実態をより適切に反映するため」と説明されることが多いようですが、IFRSの影響を無視することはできないでしょう。
また、グループ企業のあいだでも、社ごとに定率法と定額法を使い分けるケースが見られますが、資産管理が複雑化し続けることは避けられません。国際的な「定額法一本化」の影響が中小企業にまで広がっていくことは、まだ限定的といえるかもしれません。しかし、いち早く定額法に統一する中小企業が増えてきていることも、確かな動きとして存在しています。
もし、定率法が廃止されれば、法人税収が年間で最大5,000億円増加するとの試算もあるなど(日本経済新聞2014年4月8日朝刊)、実質的な「法人税の負担増」となります。ただし、企業献金を多く得ている日本の政治家が、法人税増につながる定額法一本化(定率法の廃止)に踏み切るかどうかは、疑念の声もあります。
日本国内での議論でも、国際的な動向を絶対視するのでなく、日本経済や国家財政の将来にふさわしい方向性を適切に模索する必要があるでしょう。

不動産投資への影響

不動産における減価償却の方法は、1998年4月1日以後に取得した建物は「定額法のみ」となっています。一方、建物附属設備及び構築物(貯水池・街灯・花壇など)は、定額法と定率法のいずれかを選択できましたが、「平成28年度税制改正の大綱」による減価償却の見直しによって、2016年4月1日以降に取得したものについては建物と同様に「定額法のみ」となりました。
不動産投資において、定率法には大きなメリットがありました。先にも述べたように、投資初期の減価償却費が大きいことは投資した資金の回収を早期に行い、次の投資の原資にあてられたからです。また、不動産は年が経つにつれて劣化が進み、修繕費などの負担が増加していきます。この修繕費と減価償却費の合計を「定額法より平均化」できることも大きな理由でした。
しかし、度重なる税制改正によって定率法の計算が複雑になり、正しい納税額を出すのが困難になってしまったことから「定額法への一本化」が進められています。今後、不動産の減価償却で定率法が使われる場面は、取得年度が古いものだけに限られ、やがて前時代のものとなるでしょう。
ちなみに、定額法も定率法も「最終的に収める税金は同じ」です。定率法が廃止されたことで、これから投資を行う方が不利になるということはありません。

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