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瑕疵担保責任

pixta_14920421_m 「瑕疵担保責任」とは、不動産の売買などの有償契約において、その物件に一般の人が注意を払っても発見できないような「隠れた瑕疵(欠陥)」があった場合、売主が買主に対して負う担保責任のことです。例えば、マンションなどの物件を購入したあと、「雨漏り」や「シロアリ被害」などの瑕疵が見つかったとします。この場合、特定の期間内であれば、買主は売主に対して補修するための費用や損害賠償、契約の解除などを求めることができます。
売主は「無過失責任」となっているため、問題を故意に隠していた場合はもちろん、瑕疵があることを知らなかった場合も「補償する義務」があるのです。

隠れた瑕疵について

瑕疵担保責任を指摘する際に注意したいのは「隠れた瑕疵」というポイントです。ここでいう「隠れた」という表現は、買主が通常の注意を払っていても発見できない欠陥を意味しています。つまり、通常の注意を払っていれば発見できた欠陥、及び買主が知っていた欠陥については適用外となってしまうのです。
例えば、以下の場合を見てみましょう。

売主「この部分は、過去に雨漏りがあったためにリフォームを行いました」
買主「わかりました」

中古不動産の取引きではよくあるシーンですが、法律的にはこの時点で「買主は雨漏りの存在を知った」ことになります。事情を知った上で契約を結んだことになりますから、購入後に雨漏りが発覚しても、売主に対する損害賠償請求は困難です。
「言った」「言ってない」の水掛け論にならないために、立ち合い確認や打ち合わせの際は、当事者としての意識を強く持つようにしてください。また、証拠として物件状況等の報告書など、書類をしっかりと残しておくことも重要です。

瑕疵担保責任の補償期間について

民法では、買主が瑕疵を発見してから1年以内を補償期間と定めています。ただし、不動産の場合は「新築物件」と「中古物件」を購入した場合で期間が異なりますので注意してください。

■新築物件の場合
宅地建物取引業法によると、宅地建物取引業者が売主である場合、引渡日から少なくとも最低2年は瑕疵担保責任を追うことになります。しかし、マンションやアパートなどは構造が複雑です。一般の人が2年以内に瑕疵を見つけることは困難であるため、売買にまつわるトラブルが少なくありませんでした。
そこで2000年4月、買主を保護するための「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行されました。いわゆる品確法と呼ばれるものです。この法律により、現在は新築物件の売買において、住宅の構造耐力上主要な部分(柱や梁など)や、雨水の浸入を防止する部分に「10年」の瑕疵担保責任が義務付けられています。
また、2009年10月1日以降に引き渡される新築住宅の売主には、保険への加入または保証金の供託が義務付けられました。これにより、倒産などによって売主が瑕疵担保責任を負えなくなった場合でも、確実に履行されるようになっています。

■中古物件の場合
中古物件の場合、新築物件のように買主を手厚く保護してくれる制度はありません。売主が宅地建物取引業者ならば宅地建物取引業法に基づき、最低2年間の瑕疵担保責任がありますが、基本的にそれ以上の補償を受けることは難しいといえるでしょう。また、売主が個人の場合、瑕疵担保責任を2年以下にしているケースがほとんどです。新築物件と違って、中古物件では瑕疵の見つかる可能性が高いためと考えられます。
したがって、中古物件を購入する際は、建物の状態をしっかりとチェックしておく必要があります。最近では、購入前にホームインスペクション(住宅診断士による住宅診断)をして、状態を確認する不動産投資家も増えています。

中古物件用の既存住宅売買瑕疵保険

中古物件には、買主を手厚く保護する制度はないと解説しましたが、中古物件用の「既存住宅売買瑕疵保険」を併用することで瑕疵のリスクを減らすことができます。
既存住宅売買瑕疵保険とは、国土交通大臣によって指定された住宅専門の保険会社が行っている保険サービスで、加入するのは売主です。売買された中古物件に瑕疵が見つかったときは、補修費用として保険金が事業者(倒産している場合は買主)に支払われます。

既存住宅売買瑕疵保険の対象となるのは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」及び同法の施行令によって定められている「構造耐力上主要な部分」や「雨水の浸入を防止する部分」です。また、保険法人によっては「給排水管路」と「給排水設備・電気設備」まで補償対象にしているところもあります。

既存住宅売買瑕疵保険は、大別すると「個人間売買タイプ」と「宅建業者販売タイプ」に分けることができます。いずれも加入する際には専門家による調査に合格する必要があるため、すべての中古物件が加入できるわけではない点にご注意ください。
中古物件であっても既存住宅売買瑕疵保険を利用すれば、売主は瑕疵担保責任の負担が軽くなり、買主は「補償」と「検査」を受けることができます。費用をどちらが負担するかは決められていませんから、加入する際には双方でよく話し合っておきましょう。

アフターサービスにも注目

瑕疵担保責任とは別に、近年、不動産会社では独自のアフターサービスを設けるところが増えています。瑕疵担保責任は法律によって定められた義務であるため、補償期間や補償対象がはっきりと決まっていますが、アフターサービスは契約によって異なります。


アフターサービスは「隠れた瑕疵」に限定していないのがポイントです。契約によっては瑕疵担保責任よりも範囲が広く、補償を受けやすいものもあります。瑕疵のリスクを少しでも減らしたいという方は、アフターサービスの内容についても比較してみてください。

あまりにも酷い瑕疵ならば、設計者や施工者らは不法行為責任を負う

特に新築した建物を購入する場合ですが、もしも、その建物に「基本的安全性を損なう瑕疵」があると認められれば、その建物の設計者や監理者、施工者は、不法行為責任(民法709条)を負うこととした判例があります(最高裁判所2007年7月6日判決)。

不法行為責任は、具体的には、設計者等の損害賠償責任、あるいは契約解除などですが、被害者(買い主)が損害または加害者を知ったときから3年後まで、あるいは不法行為時から20年後まで請求することができますので、一般の瑕疵担保責任よりも長い期間にわたって責任追及されうる点で、設計者等はきびしい立場に追い込まれます。

その分、その建物に居住する人々が安全に、そして安心して利用し、暮らすことができるよう、信義をもって誠実に建物を建てる社会的使命を負うものとされているのです。

そして、「基本的安全性を損なう瑕疵」とは、具体的には、次の通りだとされています(最高裁判所2011年7月21日判決)。

【建物の構造耐力に関わる瑕疵】
仮に放置した場合に、鉄筋の腐食、劣化、コンクリートの耐力低下等を引き起こし、ひいては建物の全部または一部の倒壊等に至るような深刻な瑕疵

【人身事故に繋がる危険のある瑕疵】
仮に放置した場合に、外壁が剥がれ落ちて通行人の上に落下したり、開口部やベランダ、階段などで建物の利用者が転落したりしないような重大な瑕疵

【利用者の健康や財産を損ないかねない瑕疵】
仮に放置した場合に、床などから下のフロアへ漏水するおそれ、あるいは有害物質の発生するおそれがある瑕疵

他方で、建物の美観や居住環境の快適さを損なう程度の瑕疵は、ここにいう「基本的安全性を損なう瑕疵」には含まれません。

民法大改正(2020年施行見込み)と瑕疵担保責任

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2017年5月に国会で可決、成立した改正民法により、瑕疵担保責任の規定は大きく変わります。
まず、「瑕疵」という言葉が民法からなくなり、「契約の内容に適合しないものであるとき」(新民法562条など)という規定になりました。従来は、契約の目的物に客観的な欠陥(瑕疵)があることと、契約の当事者が主観的に合意している契約内容と実際の目的物とが異なることは分けて考えられていました。しかし、新民法では前者が後者の中に取り込まれる形になりますので、瑕疵担保責任は「契約不適合責任」の一種、ひいては一般的な債務不履行責任の一種ととらえることになるのです。

従来であれば、売った物に瑕疵があることについて、売主の落ち度の有無を問わず、民事上の責任を負わなければならない「無過失責任」として定められる買主保護の規定でした。しかし、新民法では「債務不履行の原則」どおり、売主に落ち度がない場合は責任を免れることにして、売主側の負担を減らし、売買取引を促進させる方針を採っています。

また、「隠れた瑕疵」という表現もなくなっていますので、購入時に隠れていない瑕疵、つまり買主が瑕疵の存在を知って購入したとしても、売主は「契約不適合責任」を負うのです。この点では、買主はより保護されたといえるでしょう。

なお、売主による「契約不適合責任」の取り方として、追完(新民法562条…品質が足りない場合は、欠陥の修繕、代替のものがある場合は同種で適切な品質の代替物の引渡しなど)、代金減額(新民法563条)、損害賠償、契約解除(新民法564条)が規定されています。

買主は、契約不適合の事実を知ってから1年以内に、売主に事実を通知することで、これらの責任を売主に負わせることができます。ただし、契約不適合を知ってから1年を超えると、もはや買主は契約不適合責任を売主に問うことができなくなります。また、売主への通知後、10年を超えて放置した(あるいは通知後、追完などをできると知ったときから5年を超えて放置した)買主も同様です。

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