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GLOSSARY
不動産用語集
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バルクセール

 bulksale_01.jpg 「バルクセール」とは、金融機関などが不良債権(またはそれに近い不動産)を第三者に対してまとめ売りすることです。この語源となった「バルク(bulk)」とは、「大きさ」や「容量」という意味の言葉ですが、ほかにも「多量のまとまった状態」という意味を持っています。

バルクセールの歴史は比較的新しく、1990年代のアメリカで、貯蓄貸付組合(Savings and Loan Association/S&L)や相互貯蓄銀行(Mutual Savings Bank/MSB)が担保としている不動産を売却するにあたって、整理信託公社(Resolution Trust Corporation/RTC)の主導で行われたのが始まりです。

特定の金融機関が単体で実施する場合や、複数の金融機関が保有する担保不動産付きの不良債権(Non-Performing Loan/NPL)をたばねて、公開入札で売却する場合もあります(横断バルクセール)。

日本で普及したきっかけは「サブプライムローン問題」

日本では、金融機関からまとまった額の融資を受ける際、不動産を担保にするのが一般的です。そのまま返済が済めば問題ないのですが、債務者が借入金を返済できなくなってしまったとき、金融機関は損害を補うために抵当権を行使します。
しかし、担保として押さえていた不動産を競売にかけたとしても、資産価値が目減りしていることもあるため、貸し付けたお金を全額回収できる保証はありません。そこで、金融機関は不良債権を(競売以外の方法で)処分することによって、少しでも多くの資金の回収を図るのです。

不良債権を減らす方法としては、不良債権を資産から切り離すことによって貸借対照表に計上しない「直接償却」、回収できそうもない金額を試算し、予め貸倒引当金(損金)として費用化する「間接償却」がありますが、どちらも膨大な労力と時間がかかってしまうのが難点です。

なぜなら、不良債権の数が多いと、それぞれの債務者に督促を出し、それぞれの担保不動産について競売を申し立てなければならないためです。初めから回収が絶望視されるような債権や、担保不動産について欠陥や複雑な権利関係が絡んでいる場合、正面から手続きを行っていると、回収コストばかりが膨らんでしまいます。
特に、サブプライム問題で貸し倒れが急増した際は、金融機関は競売ではさばききれないほどの膨大な不良債権を抱えることになり、本来の業務に影響が出るところも少なくありませんでした。

そこで、第三の手段として選ばれたのがバルクセールです。日本では直接償却によって不良債権を最終処分する際の売却手法として、このバルクセールが普及しました。収益性が高いものも低いものも一括して売買しますので、一時は早期現金化を望む金融機関によって頻繁に行われていました。サブプライム問題も落ち着き、一部の金融機関を除いてあまり見られなくなりましたが、一部のメガバンクでは現在もバルクセールが行われています。これは、債務超過に陥った企業が破産や会社更生に至った場合に、企業の資産である不動産がまとめて売りに出されることがあるためです。

バルクセールのメリットと注意点

 bulksale_02.jpg バルクセールは、ほとんどの人や業者がほしがらないであろう不良債権をたくさん束ねることで価値を向上させ、経済的に流動化させてきた功績があります。

不動産投資家がバルクセールを利用するメリットとしては、安価な物件が大量に購入できるという点が挙げられます。いわゆる「訳あり商品の詰め合わせ」のようなもので、個別に見ると、不動産を市場の50~70%程度の価格で手に入れることが可能です。

バルクセールで注意したいのは、「入札は計画的に行う」ということです。ひとまとめにされた物件の中には、投資の初心者では持て余してしまうような「リスクの高い物件」もあります。「安価だから」という理由で購入してしまうと、損をする可能性も少なくありません。

新築から築数十年の中古物件まで、幅広い投資テクニックを身に付けた上級者向けの不動産取得方法といえるでしょう。運営に慣れて、複数の不動産を並行的に運用できる余裕のある方は、バルクセールでの物件調達に挑戦してみてはいかがでしょうか。

バルクセールの価格設定

黎明期のバルクセールでは、根拠が希薄で不当な安値で売りさばかれることが多かったため、そこに目をつけた外資系大手ファンドだけが独占的な儲けを出して、日本の富の海外流出が深刻な状況になっている点が問題視されていました。

そこで、バルクセールの妥当な値付けを目指すときに採用されることが多くなったのは、DCF法(Discounted Cash Flow Analysis/割引現在価値)という手法です。

投資予定期間中の各年度に、収益不動産から計上される予測純利益を、現在価値(Present Value/PV)に引き直して求めた各年度の合計額(NPV/正味現在価値)に、投資予定期間後に予測される不動産売却価格を 正味現在価値(NPV)に引き直した金額を足して求めます。

これを簡単な式に表すと、以下のようになります。
収益価格=各年度の純利益の現在価値の合計+投資期間終了後の不動産売却価格の現在価値

投資不動産は運用することによって、家賃収入などの利益が生まれますので、将来予測される不動産の価値は、不動産単体の価値よりも膨らむことが多いのです。それを現在価値に割り戻して同一の時間軸で検討することで、現時点での正確な価格設定を導き出すのがDCF法です。
すなわち、現在得られる100万円と、将来得られる100万円は価値が異なるという事実を前提にした算定法です。資産価値に投資時間の概念を組み入れることが可能なため、より説得力のある値付けができます。

企業買収や合併などの取引きにおいて、相手企業の保有する資産価値をできるだけ正確に把握する手法が強く求められたため、国際的には1990年代からDCF法による価格決定がデファクトスタンダード(事実上の標準)になっていました。日本では2003年に、国土交通省が策定する「不動産鑑定評価基準」において、DCF法に初めて言及されたことが普及のきっかけとなっています。

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