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不動産用語集
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見えるリスク」だけで語れない不動産投資失敗の本当の理由

不動産投資には「見えないリスク」も存在する

――ネット上には、個人投資家の「不動産投資成功物語」だけではなく「不動産投資失敗事例」も多数掲載されています。これらを読んでいると、そのケースは実に千差万別。リスクコントロールだけでは防げない失敗例も散見されます。不動産投資の成功と失敗の分岐点はどこにあるのでしょうか?
おっしゃる通り、失敗のケースは実に千差万別です。その意味で個別ケースだけを見ていると、不動産投資市場は失敗の罠だらけといった印象を持たれるかもしれません。
しかし、失敗の共通項を探ってゆくと「欲に目がくらんで」的なケースを除き、大半は物件取得の「キャッシュフロー予測が不適切」、物件運用中の「ポートフォリオ構築が未熟」、出口戦略の「売却価格予測が不適切」の3パターンに集約できます。


――それが分かっていながら、なぜ失敗するのですか?
それはこの3パターンが、10以上あるとされている周知の不動産投資のリスクと異なり、一般の投資家様には見えにくいリスクだからです。


――すると、不動産投資には「見えるリスク」と「見えないリスク」の2種類があるということですね?
単純化するとそうなります。
「見えるリスク」は、言わば周知のリスクですので「想定内のリスク」になります。対して「見えないリスク」は投資家様にとっては、当然「想定外のリスク」になります。これが表面的には千差万別と見えるさまざまな失敗例を引き起こしていると言えます。


収益物件のキャッシュフロー予測が狂ってしまう理由

――それでは1つずつお伺いしてゆきます。「キャッシュフロー予測が不適切」とは、どのようなことなのでしょうか?
当社へ相談に来られるクライアント様もそうなのですが、「高利回り=高キャッシュフロー」と誤解されている投資家様が大半と言えます。
このため高利回り物件の取得を優先し、候補物件と周辺エリアの家賃相場などで想定家賃収入を弾き出すなど、かなり楽観的な収益シミュレーションでキャッシュフロー予測をされているのが実情です。


――キャッシュフローは一般に物件構造、物件価格、想定家賃収入、空室率、管理費率、銀行借入返済額、銀行借入金返済期間などで予測できるとされていますね?
ところが、それだけでは的確な予測ができないのです。
例えば、管理費率は入居者募集の広告費と建物修繕費で大きく変動します。銀行借入返済額も借入金の返済方法(元利均等か元金均等か)、頭金と借入金のバランス、銀行借入中の金利変動などで大きな差が出ます。


――では御社の場合は、どのような手法でキャッシュフロー予測をされているのですか?
当社では「初めに高利回り物件の取得ありき」の発想はしません。クライアント様の投資目的に沿って複数の投資パターンを設定し、それぞれのパターンを次の「キャッシュフローツリー」で収益予測をします。


GPI(総潜在家賃収入)
▲空室損率
EGI(実収入)
▲OPEX(物件運用経費)
NOI(純営業収益)
▲ADS(元利返済額)
BTCF(税引き前キャッシュフロー)

この予測結果をさらに投資効率性、投資安全性など約10項目の金融工学的リスク評価指標を用いて収益予測の検証を行います。これにより、どの投資パターンがクライアント様の投資目的に対して適切かを判断します。 その上で適切な投資パターンに合致した物件を探し出し、その物件を精査して投資適否のスキャンにかけ、その上で適格と判定した物件のみをクライアント様に取得提案をしています。


――随分と手間暇をかけた物件選択をされているのですね‥‥?
はい。現実の市場変動要因は多種多様です。このため、当社では金融工学的に予測可能な市場変動要因はすべて盛り込んでキャッシュフロー予測とその検証を重ねているのです。


――なるほど。それで御社の場合は予測と結果に大きな狂いが生じないのですね?
はい。当社の場合は、さらに物件管理・運用中(※)も中間分析で予測の検証を行い、当初予測と外れる可能性がある場合は、その時点でリスクコントロールと予測修正をします。
(※)アクティスコーポレーションは投資家から委託された収益物件の管理・運用代理(賃貸経営代行)業務も行っている。


――今のお話を伺っていると、一般的に行われているキャッシュフローの予測手法と御社の予測手法とでは「見えるリスクの範囲」が根本的に違うようですね?
投資リスクを可視化できる範囲が広ければ広いほど、投資リスクは「想定内のリスク」になるので、予測が外れそうな事態が起きても対応が容易です。しかし「見えないリスク」に対しては、どんなに優れた投資家様でも対応は不可能です。
したがって「キャッシュフロー予測が不適切」とは、可視化しているリスクの範囲が狭いところに起因しているわけで、範囲が狭ければ狂いが大きくなるのは当然と言えます。


一般投資家のポートフォリオ構築が未熟になる理由

――では「ポートフォリオ構築が未熟」とは、どのようなことなのでしょうか?
年間60万円程度の副業的収入を目的とした不動産投資は別ですが、事業的規模の不動産投資を行うためには、複数棟への投資が必要です。
例えば、定年退職後の生活安定化に備え、不動産投資で年間1000万円程度のキャッシュフロー(税引き前、以下同)確保を目指すとすると、賃貸マンション1棟だけの投資では無理です。どんなに収益力が優れた物件でも、1棟当たりのキャッシュフローは「年間最大300万円程度」が現実的なところです。
したがって1000万円のキャッシュフローを稼ぐには単純計算で4棟。現実的には5棟以上の物件運用が必要になります。
このため実際の投資プロセスでは、1棟目のキャッシュフローで2棟目投資の原資を作って2棟目に投資し、2棟目のキャッシュフローで3棟目投資の原資を作るという風に、階段を一段ずつ上るように物件拡大を行い、目標キャッシュフローを達成することになります。
このプロセスにおいて、例えば既存4物件で十分なキャッシュフローが出ているので5棟目に投資しようとしたら、それまで貸出に積極的だった銀行の融資審査が突然通らなくなり、5棟目の投資が頓挫することがあります。なぜこんなことになるのかというと、たいていは既存物件の債務超過が原因です。


――つまり、既存4物件のP/L(損益計算書)を見る限りは黒字だが、B/S(貸借対照表)の負債・純資産合計が資産の合計額を超過しているといったケースですね?
はい。また、例えば既存4物件のうち1物件の資産価値が毀損、あるいは低下していると、銀行の積算評価額が低くなるので、やはり「5棟目の融資審査が通らない」ケースも発生します。
したがって事業的規模の不動産投資を行うためには、どうしても既存物件における「ポートフォリオ構築の健全化」が重要になってきます。 具体的には賃貸マンション、賃貸アパートなど収益タイプが異なる物件の組み合わせでB/Sが債務超過に陥らないようにする必要があります。


――ところが、投資家の大半はP/Lだけを見て、当初計画通りのキャッシュフローが出ているか否かしか見ていない。だからポートフォリオ構築が未熟でも健全だと錯覚してしまうわけですね?
不動産投資においては、P/Lと同等にB/Sも重要です。
仮にP/Lが良好でもB/Sが悪化していれば、その物件運用には資産価値を毀損・劣化させる時限爆弾が潜んでいることになります。その場合は早急に時限爆弾を探し出し、除去しなければなりません。これは一般の企業経営とまったく変わらないと言えるでしょう。
ポートフォリオ構築が未熟だと、時限爆弾が潜みやすいのです。これは「ある日突然」と言われる既存物件の資産価値毀損・劣化要因になり、ひいては投資撤退要因になります。したがって成熟したポートフォリオ構築で、時限爆弾が潜む余地をなくすことが重要なのです。


出口戦略において売却査定価格と実勢価格が乖離する理由

――最後に「売却価格予測が不適切」とは、どのようなことなのでしょうか?
おっしゃるとおりです。
収益物件の売却価格査定は、収益還元法の直接還元法で行われるのが普通です。
通常は「NOI(年間純営業収益)÷キャップレート(還元利回り)」で算出します。
※NOI(年間純営業収益)とは、満室賃料(総潜在家賃収入)から空室損率や物件運用経費を差し引いた金額

仮に4500万円で取得した物件のNOIが330万円、キャップレートが7%とすると、この場合は「330万円÷0.07=約4714万円」なので、4500万円で取得した物件が4714万円で売却可能との査定になります。
実際は物件の築年数、立地、また相場を反映して査定額を補正しています。


――ところが、実勢価格は売却査定価格より低く、「この値段で売却したらローン残債を完済できない」というケースも見られます。売却査定価格と実勢価格の乖離はどうして生まれるのですか?
乖離の原因はNOIの把握法とキャップレートの設定にあります。
不動産業界で行われている一般的な売却価格予測は、平均相場算出的手法でNOIを把握し、キャップレートを設定しています。この手法では個々の物件特性は予測に反映されません。
結果として平均像に近い物件の予測は当たるし、平均像から遠い物件は外れる可能性が高まるしくみです。


――御社ではどのような手法で予測されているのですか?

当社の場合は、これまで蓄積してきた自社の管理・運用物件のデータベースを基に、例えば、5年後の売却想定なら「当該物件の家賃は5年後に何%下落するのか」の下落予測からNOIを把握する一方、当該物件周辺エリアの類似物件の売り出し事例、売却事例などからキャップレートを設定して物件売却価格を査定し、その査定額を先に挙げた約10項目の金融工学的リスク評価指標で補正した額を「売却価格予測」にしています。
したがって、当社の予測手法では出口戦略発動時の類似物件との競争力、残存法定耐用年数など物件個々の特性を反映した予測が可能になっています。

こうした見えないリスクが発生する裏には、物件仲介と物件管理を別々の会社が行っている現在の不動産業界における一般的な業態にも一因があると思います。仲介会社は基本的に物件運用(賃貸経営)には関与しませんし、管理会社も建物管理のノウハウはあっても物件運用のノウハウはない。
したがっていずれの業態も「見えないリスク」に対処するノウハウはなく、投資にアドバイスできるのは「見えるリスクだけ」が実情です。


――なるほど。その意味で、御社のように物件仲介から管理・運用代理まで一貫して手掛けておられる会社でなければ、投資家に「見えないリスク」のアドバイスを行うことは難しいですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。


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